愛すべき、藤井。


お前は電車通学だったら『減るもんじゃないし〜』って痴漢させとくのか?って。そんなレベルの話だぞ。


まぁ、きっと。お前の事だから最近の藤井は口うるせぇな!くらいに思ってんだろうけどさ。


「藤井、」

「はいはい、分かったよ、黙りゃいいんだろ」

「そうじゃなくて。心配してくれてありがとう」


心做しか、腰に回された夏乃の腕がギュッときつくなった気がして、背中に夏乃の体温を感じる。

変に心臓が暴れ始めて、


「っ、……は?」

「なによ」

「今、なんつった?もしかして夏乃様の口からお礼の言葉が述べられた???なんだ?今日 この世は破滅すんのか?」

「あのねぇ!!!人が……せっかく素直に言ってみたのにさ!藤井お前、やっぱ吊るす」



ただ夏乃に『ありがとう』と言われただけなのに、チャリをこぐ俺の口元はアホみたいにニヤける。


「フッ、どういたまして夏乃様」


何となくチャリから片手を離した俺は、俺の腰に回っている夏乃の手の上にそれを重ねた。

ビクッと震えた夏乃の手をギュッと包み込んで、たまにはこんな絆の確認もありかもしれないなんて思う。


俺より小さいその手に、やっぱ夏乃も女なんだよなー、とか思うと少しだけ愛おしい気持ちになったり……


「クソ野郎」

「は?何でだよ!!」

「さっわんな、汚らわしい!」


訂正。
やっぱこいつ、根っからのクソ女だ。
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