愛すべき、藤井。
***
「立花くんってそんなイケメンなんだ」
「……んー、まぁ。男の俺から見てもかっこいいけど」
「なら、伊藤もコロッといっちゃうかもね」
夏休みと言えど、毎日 部活がある野球部の神田は、黒さに磨きがかかっている。
今日も夏乃とプレミアムな補習を終え、帰宅した俺の家に、部活帰りの神田がやって来たのはちょうど13時を少し過ぎた頃。
「いや〜、夏乃に限ってそれはないだろ」
「なんで?」
「だって、今までも彼氏なんて作ったことなかったし、興味なさそうじゃん。夏乃」
「……それは、藤井がいるからじゃない」
どーでもいい話をしていたはずなのに、気づけば立花が毎日 夏乃に連絡してるらしいって話に辿り着き……今に至る。
「俺がいるからって?」
「藤井ってさ、本気なの?」
「は?」
「本気でそこまでアホなのかって聞いてんの」
俺に、味方というものはいない。
夏乃はもちろん、坂部も……そして神田も。みんな、俺へ毒を吐くのが生きがいなんじゃねぇかと思っている。
「……?」
「だって、仮にも伊藤に告られたんだろ?『興味なさそう』って、何?」
「あ……いや、そっか」
「それに、伊藤は藤井と一緒にいるせいで、他の男がアプローチ出来ずにいるだけだよ」
「は?」
「気さくで話しやすいし、笑った顔が可愛いって他クラスの男子からも結構 話題にあがるよ。野球部では特に」
いや、いやいや。
まじかよ。