愛すべき、藤井。
俺は聞いたことねぇけど?
夏乃が可愛いとか、そんな話題……。
「じゃあ、お前も夏乃のこと可愛いと思うわけ?」
「まぁ、可愛いよ。伊藤ってヘアアレンジとかも得意じゃん?あれも野球部の中では結構ポイント高いっぽい」
「……へぇ」
「何?ちょっとヤキモチとか妬いた?」
6帖ちょっとの俺の部屋は、エアコンなんて付いてない。どんなに付けて欲しいって懇願したって「どうせ男は汗臭い生き物だからいいのよ、そのうちね」と、母ちゃんに軽く流されるだけだった。
そんな暑さ全開の俺の部屋で、あたかも自分の部屋か?レベルで寛ぐ神田は、ニヤッと口角をあげて俺を見る。
「……そりゃ、多少は」
「……藤井さ、絶対分かってないよね」
「は?何がだよ」
「ヤキモチの意味知ってんの?」
「俺のことどんだけアホだと思ってんだよ!分かってるよヤキモチの意味くらい!!」
少しムキになって答えた俺に「はぁ……」と深いため息を吐いた神田は、
「なら、藤井は何に対してヤキモチ妬いた?」
ムキになって知っていると言い張った事を、簡単に後悔させるくらいの難題を俺へと突きつけた。