涙のあとで、風は吹く。
 水の入った柄杓を右手に持った僕は、君の__お墓の前に立った。



 「しばらく来れてなかった。ごめんね?」



 自然と言葉が零れる。


 僕は柄杓を置いてマッチをすると、蝋燭に火をつけた。


 ゆらゆらと、風に吹かれながら揺れる。


 ……香穂が亡くなってから、半年が過ぎたんだ。


 春が終わって、夏が来て、そんな夏も、もうすぐ終わろうとしている。



 「ねぇ、僕は……もう一度、君に会いたい」
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