涙のあとで、風は吹く。
 さっきよりも、もっと強く。
 何もかもを洗い流していくような、力強い風。


 思わず目を瞑った。


 バサバサと服が音を立ててなびく。


 __風が、止んだ。


 目を開けると、相変わらず、君の眠っている場所が目の前にある。


 けれどそこに、君の姿はもうなかった。



 「香穂……」



 けれどまだ、そこにいる気がして。
< 8 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop