永久の誓いからの逃亡
「あー、あのときは、良い子だなって思ったよ。

けど、俺ひねくれてるからさ。
もしかしたら、俺だから優しくしたのかもって心のどこかで思ったんだ。
笑っちゃうよな」

そ、そうなんだ…。
それはひねくれてる…。

でも、そしたらもう思い付かない。
それ以降は、ちょっかいを出されるようになって、駿くんを避けまくるようになったし。

「その次の日だよ。
俺がビルに入ろうとしたら、入口付近で小さい男の子が立ってたんだよ。
そんな所で小さい子が1人でいるなんておかしいから、たぶん、お父さんかお母さんを待ってるんだろうと思ってただ見てたんだ。
たぶん、他の通行人もそう思ったから誰も声をかけなかったんだろうな。

そしたらビルの中から真綾が出てきて、真っ直ぐその子に向かって行ったんだ。

その子の前にしゃがんで、一言二言話してた。
そしたら、その男の子はわんわん泣き出したんだよ。

そこでようやく俺は状況を把握した。
その子は迷子だったんだって。

誰も声をかけるどころか、その子の不安に気付くことすらできなかった。
俺は大人として駄目だなって反省してたら、真綾はその子の手を取って俺の前を歩いていった。

1人でここまで来られて偉いね。
もう大丈夫だよ。
私と一緒にお父さんの会社に行こうねって笑顔で言いながら」

あった。
そういうことがあった。
思い出した。

駿くんに見られてたんだ…。
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