七瀬クンとの恋愛事情
「…………俺のスケジュールとか、プライベートな事とか、まぁ聞かれても答えないけど」
相変わらず強引に押し切られるような好かれ方をされる子だな君は
まあ、【 ふぇると 】のカナちゃんは私のアドバイス通り店長に事情を話した事で、暫くしてネットの書き込みも付きまといもなくなったようだが
ただ
社内の女子たちで、本当に実在するのか明確にされていない『七瀬くんの彼女』に関しての追及がしつこく行われている
「とりあえずまた、デスクで待ち構えてたから思わず逃げてきた」
確かに、彼女の高い声のトーンは仕事中にはちょっと耳障りだ
「私が言っとこうか?」
ちょっと空気が読めない彼女のおかげで、派遣組女子と一般職事務の女子たちと微妙な亀裂があるのも正直気になっていた
「……………」
目の前に立つ私の肩に彼の頭がふわりと凭れ掛かる
「七瀬くん?」
「………いいよ自分の事だし、倫子さんだと返って面倒になりそうだし」
確かに正直面倒くさいが、部署内の規律は良くしないと………
「あの香水付けてるんだ」
ゆっくりと両腕を掴まれて、凭れ掛かった肩からスンッと鼻を鳴らす
「これってば、俺の匂いだ………」
「こらこらこらっ」
次第に身体全体が抱き込まれ、耳元に寄せられた唇から息がかかる
まるでピンッと尖った耳と、機嫌良くフリフリと振られる尻尾が見えるようだ
クィッと簡単に顎を持ち上げられ、前屈みになった彼の唇が落ちてくるのを、予想をつけて私の手のひらがその口を両手で押さえ込んだ