七瀬クンとの恋愛事情
「ん?」
「だから、ここは会社だっ………んーーっ」
なのに結局その手も唇も彼には簡単に押し切られてしまうのだ
なんたって186㎝の長身に149㎝での太刀打ちは無謀だ
私が関係をバレないようにしたいって事を、彼はまるで一種のリスクのあるゲームとして楽しんでいるようだ
初めは軽く遊ぶ七瀬くんの唇が、いつもの誘うような強引に触れるキスになっていく
両腕をがっつり掴まれた状態じゃあ
ジタバタしたって、私の力任せな抵抗なんて通じない
逆に、その唇に引き込まれる前に無防備になっている彼の頰を思いっきり引っ張り抓上げた
「は、ひててっ………!」
「もうっ……いい加減にしな…」
「なっなせぇさぁーんっ!!」
タイミングよく二人でいる小会議室の扉の向こう側から名取さんの声が聞こえた
「まだ捜してる」
ククッと七瀬くんは喉を鳴らすが、笑い事じゃない
まさに彼女が、その扉を開けそうになっているから、逆にすぐ七瀬くんだけを部屋から追い出した
「七瀬さんっ」
「……名取さん、なに?さっきから」
私の仕打ちに多少不機嫌になったまま、彼女への対応をする
「どこ行ってたんですか?」
「そこの会議室で寝てた、昨日ちょっと寝不足だったから」
そんな言い訳を私は扉の中で聞いていた
「書類を………」
差し出された1枚の書類をすぐに受け取ると、
「いいよ、後は俺がやっとく、あと名取さんは山下さんに仕事振ってもらって」
「え、あ………」
他に話したい事でもあるのだろうが、そっけなく交わされている