七瀬クンとの恋愛事情




「あら?七瀬さんって、香水付けてます?」



部署へ戻りながら何とか七瀬くんの長い脚の歩幅について歩く名取さん


ほのかに七瀬くんからする香りに首を傾げている

「いや?つけてないよ。朝の電車でついたかな?」

と、そう答えながら分からないように口角を上げる


二人が去って行ったのを見計らって部署に戻ろうと、扉を開けた私には知らない会話だ






でも、

逆に聞きたくもない会話に出くわすことも良くある

例えば昼休憩の給湯室だ
この時間のここは、女子達の井戸端会議所だ

ありとあらゆる仕事内容以外の愚痴や人に関する噂が、ほぼ50%くらい内容の正解率で論議されている


私はデスク飯のため、この会議中の場面に何度か遭遇する事があるが、ここは気を使って聞いていないフリをしなければならない

中でも対立のある総務部や経理部の女子正社員組と営業部や企画部の補佐の派遣社員との仲には役職付きとしてはあくまで中立でいなければならない



今日、この井戸端会議所を確保したのは、あの甲高い声を出す名取さん御一行だ

うっ………廊下からでも分かる、他に2人ほどの仲間たちとの愚痴り合いが始まっていた
これは解散するまで待った方が良さそうだ



「だからっ! 絶対七瀬さんに社外の彼女なんていないって」


「………へ?」

し、しまった………つい足を止めてしまった

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