七瀬クンとの恋愛事情
『考え込んでいたこと』
それがなんだったのか、当時の私にはあまり分かり得なかったが、
ひと回り歳が離れた宗馬社長は、私にとって本当に憧れで大人の男性そのものだった
だから、偶にこっそり食事に誘ってくれるだけで十分だった
チビで童顔で24歳なのにまともに男の人と付き合ったこともない私が彼に気持ちを持っていかれない訳がない
行ったことのないホテルのラウンジや、私一人だったら絶対に入店を断られそうなBarにも連れて行ってもらい
180㎝の長身にひと回り歳が離れた
当時35歳でやり手の自社ボスだ
年相応の銀縁インテリ眼鏡の切れ長な目は、社員を統括する鋭ささえ持ち合わせている
それでいて私みたいなお子様の話を聞きながら少年のような笑顔をみせてくれる
でも、今にして思えばあの頃彼と話していた事って、社内の話ばかりだったような気がする
内緒での食事(デート)が半年くらい続いた頃には、自然と彼の腕の中で人生初めての朝を迎えていた
そして
「え、松原って宗馬社長と付き合ってんの?」
誰にも内緒にしていた関係は、思わぬ時にバレるもんだ
同期の綾子と脇谷くん、それに先輩の高科さんとの定期的な飲み会で、休日に出かけていた私たちを見かけた綾子からの追及だった
「………いや、あの………まぁ、うん」
「なぁんだ〜水臭い、言ってくれれば良かったのに」
そう言って微笑んでくれた綾子にホッとしたのを覚えている