七瀬クンとの恋愛事情


「社長も相変わらずだな」

あの頃から大体の事情を知っている脇谷くんだからそう言うのだ

「そう、でもまぁ…社長だし」

手作業は止めないまま流すような会話が続く

「まだ松原に未練があったりして」


「………んな訳ないじゃん。綾子、2人目出来たらしいわよ」

「あ、そうなんだ」


あの頃からもう時間は十分経っている
彼に選ばれた綾子とは結婚式に出席しなかった私とあの頃から顔を合わすことなく家庭に収まったから、退職した同期の風の噂として受け止める事だって出来るようになっている






「あっそういえば例の親睦会、今週末に決まったから予定開けておいて」

片付けも終わり一旦部署に帰るため戻ろうとした時、思い出したようにまた脇谷くんに呼び止められた

「花菱商事の?」

「向こうの都合で悪いけど、大丈夫か?」

「うん、大丈夫わかった」


親睦会をする花菱商事は、少し前に脇谷くんの担当していた会社だ
その後も、メンテナンスを含む交流のため偶に食事会が開かれる
営業担当の高科課長と脇谷くんでの仕事だが、向こうの対応担当が女性のため、あえて私も駆り出されて、今回は男性4人に女性2人の食事会になった

週末、今後のためにも付き合っておきたい一応仕事絡みの食事会だ
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