七瀬クンとの恋愛事情

ただ今の時刻はPM9:00を回ったところ
………うーん、これから飲みに行くとなると帰りはだいぶ遅くなるよなぁ

七瀬くんがうちに先に来ちゃうと困るし、とりあえずメールだけはしておくか


【ごめん、これからまだ飲みに行くから、ちょっと遅くなりそう】


きっと七瀬くん達の飲み会も、いつもみたいに盛り上がれば2次回3次回とあるはずだし





「倫ちゃん、行くよぉ」

高科課長に呼ばれ、携帯から視線を離した瞬間
大通りを挟んだ向かい側にいる人物を見つけ、身体中のすべての熱が一気に噴き出すほどの感覚に襲われながら視線が釘付けになった

見覚えのある背格好

でもここからじゃだいぶ遠いから、間違いかもしれないのに

それでもなぜか彼だと確信できた





背の高い七瀬くんの首に腕をまわし、大胆にも周りを気にせず

綺麗なキスシーンのシルエットだった

「……………」


その長いキスに、遠目からでも彼も彼女の腰に手を回しているのが分かる


騒然とした人混みの中なのに私の目に入るのはその2人の姿だけだ

「あんなの、よくやるな」


目が放せずに立ち止まっていた私に、ボソリと呟いた脇谷くんの声で、咄嗟に視線を反らせた

「なにが?」

脇谷くんも見ていただろうキスシーンに気がついていなかった高科課長が視線をあげて見回している

もう一度顔をそっと上げ見直すと、いつの間にかその場にはいなくなっていた2人の姿

見間違い……?
なんてそうであって欲しいと思うだけ


あぁ…………



やっぱり『遅くなりそう』なんてメール、

送らなきゃよかった



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