七瀬クンとの恋愛事情

決して疑う訳ではないが、何かの雑誌で読んだ事がある。「男性の隠し事に対する言い訳には必ず『姉』『妹』『親』のカモフラージュ名が付き物だ」と……

昨日の事を思い出すと、今までのそんな七瀬くんの話を素直に信じる気にはなれない

その思考は一種の感情を抑える儀式みたいに気分を冷ややかさせる







「倫子さん、どうしたの?」

ローテーブルの前から身を乗り出して私の顔を覗きこむ長い腕が伸び、その私の頰まで届いた指に目尻を撫でられた


「何かって?なんにもないよ」


いろいろあり過ぎて………でも
それはお互い様だ









真っ直ぐ見つめる七瀬くんに、昨日君を見た事
それに課長との事だって、もし言ってみたとしたらどうなるんだろう




身体から始まったこの関係は、利害一致できっとお互いのデリケートな部分を隠して、感情のない上辺だけの心地いい関係でいられれば、いずれ自然に解消させられる

それまで楽しめばいいんだ


「うんっ意外と美味しいよ、この失敗作」


「失敗って言ってる自体別物じゃん、この時点で」




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