七瀬クンとの恋愛事情


どの口がそんなことを

確かに6年前、会社のために大手企業の役員である綾子の親と手助けの話をつけたのは専務だった

そして貴方と付き合っていた私には、同じ会社にいながらそれほどまで会社自体が大変だと教えてもらえなかった


綾子の貴方に対する気持ちを利用した専務の作に最後に乗ったのは貴方じゃなかったっけ?


「こうゆう話を………貴方から進められることが嫌なんです。ほっといてもらいたいのが分かりませんか?」

腹立たしさから思わず声が震える

悔しさの余りそう言ってしまって、すぐに後悔した



「この話は仕事の一環としてくれないだろうか?」


仕事の一環?お見合いが?
どう考えたって、ただ先方に取り入りたいだけのあの狸の策略だろう?

「私としてはずっと君の幸せを願っている」


「身勝手な言い訳ですね」


「………倫子さん?」

「……………」


昔、そんな呼び方をされていたことがある


チビで童顔で、年下からも威厳が持たれなかったから、あえて名前呼びの『さん』付け
あの頃貴方からそう呼ばれることが嬉しかった


「はっきり上司命令って言えばいいでしょ?」


気持ちばかりが先行して、思わず精一杯の捨て台詞が口からついて出た



だったらどうしてあの時に私を選んであなたが幸せにしてくれなかったの?



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