七瀬クンとの恋愛事情
「主任いつも愛妻弁当じゃなかったでした?」
確かに、いつもはデスクで食べてたな
「もしかして奥さんと喧嘩でもしたんスか?」
まだまだ新婚の主任によくそんな事聞けるな山下さん
「ま、いろいろな」
ズケズケと上ずった声で話す山下さんに対して、それでも顔色ひとつ変えない脇谷主任が
フッと顔を上げた
「………七瀬だって」
「え?」
主任の人差し指が、週末に口を切って赤くなっている俺の傷を示した
「子猫と喧嘩でもしたか?」
そう言って、ニヤリと口角を上げる
う…やっぱり目敏いな
こうゆうのに鼻が効く人なんだ
「………まぁ、ちょっと」
そう言えばこの唇の傷もなかなか治らない
喧嘩とは言ってもこの傷は全く関係ないが、
「へぇっ、結構激しいんだな、お前の『鈴ちゃん』はっ」
山下さんに隣からいきなりハハッとそう笑われ、背中を叩かれる
「ん、鈴ちゃん?」
その山下さんの発言に首を傾げる脇谷主任
「七瀬の彼女の名前っス。こいつ、彼女のことを全然話したがらないからせめて名前だけは教えろって」
「へぇ……それでスズちゃんねぇ…」
食べる手を止めて俺を見る微妙に片眉を上げる脇谷主任の、
その表情がイマイチ読み取れない