七瀬クンとの恋愛事情
「?」
突然口を押さえて顔を伏せて、考える仕草を見せる脇谷主任
「どうしたんっスか?」
「いや、なんでもない」
「……………」
「悪い、山下水持って来てくれるか?」
セルフの水を指差して頼むと、言われた通りに山下さんが席を立った
ここでこの人の、俺にじゃなく山下さんに水を頼む意図に個人的な何かを聞かれるんだろうと気づいて身構えた
しまった、この人はカンが良かったっけ………
「お前の彼女って社内の奴?」
う………やっぱり
突然確信をついてきた
「何がスか?」
もしかしてカマをかけられているのかもしれないが、山下さんのような興味本位で聞いてきているのとも違うような気がする
「お前この前古坂と二人でいたのを見たから」
「は、古坂?」
山下さんがいない時のこの人のこの言動に、胸が騒ぎだした
「大通りでキスしてただろ?」
一瞬にして背筋に冷たいものが走る
「…………見てたんですか?」
「見てた、だからお前の内緒の彼女って古坂だったのかと思ったが」
なんの気もなしにまた食事を再開し始める主任を前に、俺は頭の中で整理がつかないまま、視点のちがう質問を返した
「その時ってもしかして………他に」
うわずる俺の声に顔を上げた脇谷主任が首を傾げる
「ああ、高科課長と松原も一緒だった時な」
「…………っ!?」