七瀬クンとの恋愛事情



「………はぁ」

忙しさの中、とうとうその日は来てしまった


「今日なんですよね、お見合いって」

「顔合わせの打ち合わせね」

営業と一緒に顔合わせとして同行した後、そのお見合い相手と場所を変えて食事をすることになっている


ハッキリいって、相手がどんなに好印象な人物でも、あの婚活パーティーの末に付き合った豊田さんの事があったので、もう即断る心づもりしかない

「あとは頼むわね、名取さん」

これから出かけて、そのままだから彼女には定時までに出来る最低限の仕事をだしてある

「頑張ってくださいね、主任」

いつになく上機嫌でそう言う彼女がカンにさわる

「はい、どうも」

返事だけはしておいた


あれから仕事のせいで私も然り、七瀬くんも余裕がなく、最近はうちに来ることも少なくなった

これはとんだブラック物件だわ

もともとあのころ毎日送ってくれていたのにも無理があったのかもしれない

「いやいや、そんな事より今から気合いを入れないと」

出かける前に身だしなみをと、化粧直しに席を立つ

もっとも、お見合いで気合いを入れているなんて思われない程度にだけど

トイレに立ち寄るつもりで向かうと、その手前でグイッと腕を強く引っ張られ引きずられていく

「ちょっ!!」
< 178 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop