七瀬クンとの恋愛事情
それでも付き合い始めたんだから、そんなもんだろうと思っていた
メールの内容も【今日はいい天気だね】とか
【今、出先の○○で仕事してる】とか
【仕事あんまり遅くならない様にね】
なんて内容だったから
ただ問題は、彼の理解できない性癖だった
「私は、やっぱり豊田さんとはお付き合いできません」
こうして目の前に立つと、身体が震える
逃げたくて近づく彼から後ずさる
「そんな、あんな事くらいでなんて」
がっつり腕を掴まれた
「とにかくもっと2人で話し合おうよ。きっと君も理解してくれるはずだから」
「い…嫌です、離してごめんなさいっ」
その強い力で掴まれると、嫌でも思い出してしまう
なんとか振り解きたくて、引き込まれる彼から抵抗した
「この前はちょっとやり過ぎたよ、これからはもっとちゃんと少しづつねっ」
「離してっ!!」
どうしよう、
このままじゃぁ逃げ場がない
マンションの部屋に逃げても着いて来られたりしたら…
「…………なにやってんだ、あんた」
私を掴む彼の腕を、もう一人の手がそれを掴む
「うっ、いだっ!」
そこに、ぎぃっと力が入ったらしく、
あっという間に私への腕が解放された
「え、ななせ………くん?」
さっきのタクシーは確かに降りた後、走っていったのに
もう既にヘタリ込みそうな私の前に、その大きな背中が立ち塞がった
「な、何だよお前はっ」