七瀬クンとの恋愛事情

「は?」

何をおっしゃるウサギさん、冗談はヨシ子さん
だよ??

どう対応したらいいか目を泳がせる私に対して、怪訝そうな表情を浮かべる鈴木さん


「と言うことで鈴木さん、松原は諦めて下さい。私たちはこれで失礼します。僕の、この失礼な行為はまた後日埋め合わせさせて下さい」

そう言ったと同時に腕をグィッと掴まれたまま、深々と頭を下げて立ち上がり、引っ張られていく


「え、あ、ちょっと!」

私が口を出す隙もなく料亭の部屋の襖が開き、後ろ向きのまま何とか鈴木さんに
「あのっすみません」とだけ声を掛けた



その状態で暫く腕を掴まれたまま、店の外まで連れ出された


店の前で一旦足を止めたのに、またその体制で歩きだそうとしたから、今度は私の方が歩くのをやめた

逆に、高科課長が私に腕を引かれる感じで足を止めた

「戻りましょう、課長。絶対さっきのは失礼ですっ」

せっかくの食事もそこそこでいきなり中座してくるなんて、いまごろ鈴木さんは一人で



「大丈夫だよ、こうでもしなきゃたぶんハッキリ断りづらかっただろ」


「………でも」

これから仕事で顔を合わせるのに、気まずいままだと


手を放して店から通りを歩きだした課長の後を仕方なくついて歩いた

「今度また改めて俺一人で謝りに行くから心配するな」

「……………」

暫くその背中を見つめる
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