七瀬クンとの恋愛事情

「………わかりません」


私には今、七瀬くんとの関係に答えなんてないからそう答えるしかなかった

実際、流されたままの現状であって付き合っているとは言えない関係なんだから

そしてその先からまた課長の溜め息が落ちた


「すみません……」

「そこで謝んな、傷つくだろう」




ファミレスを出て、家に帰るため2人で駅に向かった

タクシーでマンションまで送ると言う課長の申し出に、大きく首を振った

「じゃあ、一緒に電車で倫ちゃんのマンションまで送るよ」


「えっ」

それも困るかもしれない

課長が私の顔を覗き込んで目を細めた

「もしかして、七瀬が来てるとか?」

「……………」

一応家に来るとは言っていたが、あんまり待つなと言っておいた

「ま、普通は気になるよな。彼女が上司の命令でお得意様とお見合いするなんて状況」

『彼女』なんてそんな確定されたポジションなんかじゃない


ふと、隣で歩く課長の足が止まって、頭を傾けて目の前に顔を寄せてきた

「な、な、なんですか?」

歩く方向を遮られるような近さで、思わず足を引いた

俯いて目を反らせると、高科課長がいきなり私の頭を思いきり掴んで、わしゃわしゃと髪が乱れるほど掻き上げた

「わっ、ちょっ……」


頭の手を止めて再度顔を覗き込まれて

「七瀬がいるからって、ハイそうですかで済むわけ無いだろ」

「…………っ」

「好きだって言ってんだ!もう遠慮はしないからな」


こんな人通りのある中で、他からみればなんてバカップルだと思われるだろうに

この人、こんなキャラだったっけ?!


で、自分からそう言ったくせに私より顔を真っ赤にさせる35歳男性ってなんなのよ


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