七瀬クンとの恋愛事情
「………お疲れ様でした」
一礼して改札口をくぐった私を、その場に立ったまま軽く手を振って見送ってくれた
「…………」
さっき、高科課長に言われた事を思いかえしながら家路への電車に乗り込んだ
考えてみれば課長の話は最初から最後まで、完全に告白だったんだ
それでいて、七瀬くんとの付き合いの事も気づいていたんだ………
何となくモヤモヤした気分のまま駅を出て、自宅マンションに向かう
3階まで階段を上ったところで角部屋の自分の玄関が見えるが、
一瞬そこに人影を探す自分がいる
玄関を背凭れにして、私を待っている背の高い男の子
「いないか………待つなって言っちゃったし」
会社では毎日顔を合わすのに、最近じゃあ時間が合わないから仕事以外の話なんて出来ない。
彼だって忙しいはずなんだから
玄関の扉を開けながら溜め息をつく
「どうしたんですか?!」
その声に振り向くと、
階段の最終段を上りきった人物が息を切らしながら近づいてくる
「え……?!」
「今、溜め息ついてたでしょ?何かあったんですか?」
前屈みで少し肩を揺らして、明らかに3階一気に上がってきたような汗掻いて………
「七瀬くん」
そんでもって溜め息って、そんな事聞く?
開けたドアノブを持ったまま目が離せず、なぜか私の胸も彼に同調するようにドキドキと弾む