七瀬クンとの恋愛事情
「俺? 俺はこの人の部下で後輩。でもこの人俺にとって結構大事な人なんで」
「へっ?」
いま、なんと?
七瀬くんと比べたら豊田さんの方がはるかに背が低い
だから、七瀬くんを前に低い位置からグッと握り締められた彼の拳が一瞬私の目に入った
「あ、だめぇっ!」
咄嗟に殴られないように庇おうと七瀬くんの前に出るが、その拳は私の目の前で七瀬くんの腕に止められていた
「危ないじゃないか、ダメだよ倫子さん」
「あ………」
私を庇ってくれた手のまま、肩を抱かれ後ろに引かれ
その反動で七瀬くんの脚が綺麗に彼を蹴り上げていた
「あ、」
「いてぇっっ!」
地面に蹲る豊田さん
私が七瀬くんの背中から彼を見下すと、ゾッとする様なあの目で睨みつけてきた。
それに、いつも綺麗に整えられていた髪が少し乱れている
思わずギュッと七瀬くんの背中にしがみついた
「俺、高校ん時サッカー部だったんッスよ、しかもFW」
「知るかっそんな事っ!」
「でも怪我しちゃったんだよねぇ………」
淡々とそんな話をする七瀬くんの顔は見えない
でも、語尾の声が段々低くなっていく
「…………」
「結構上手かったっスけどね、俺ってばそれからちょっとグレててさぁ〜」
尻もちついている豊田さんを見下げる七瀬くん
その七瀬くんを見上げている豊田さんの顔色が段々と青ざめていく