七瀬クンとの恋愛事情
「駅から倫子さんが見えたから………入っていい?」
「ここまで来て追い返したりしないわよ」
私も素直にどうぞ入ってって、言ったらいいのに
ん?
「何それ?」
ビジネスバッグと一緒に持っているビニール袋を指摘すると、それを目の前に差し出した
「たこ焼き、駅前の。最後あと3パックだって言うから買ってきたんです。食べれます?」
「3パックも?」
中を覗くと、確かに8個入りのたこ焼きが
「2パックしか要らないって言えばたぶんもう1パックはおまけしてくれたのに、あのオジさん」
「あ………えぇーー」
私も良く駅前の屋台たこ焼きは買うんだよね
遅くまでやってるから
で、売れ残ったのをおまけしてくれるいつも気のいいお店のオジさんだ
「きっと倫子さん、小腹空かせてると思ったからそのまま買ってきちゃっいました」
確かに、ほとんどのどに通らなかった料理に加えて途中退場だったから、今になって空いてきたような気もする
「でも今度買う時にはオジさんにまけて貰うように言ってみます」
意気込むようにそう言うから、なんだか可笑しかった
「ハハハ、七瀬くん優し過ぎるからそんな事言える?」
狭いキッチンでトレーに湯のみを並べ、お茶を入れる私の背中から長い腕が身体に絡みつく
「じゃあ、今度は一緒に買いに行こうよ」