七瀬クンとの恋愛事情


それでも立ったままの七瀬くんに、私は小さな溜め息をついた


七瀬くんは私より6歳も年下だし
これからいろんな子とも恋愛出来る
だからまぁ、私も今一時のその一人みたいなもので


「私だっていちいち七瀬くんに干渉したりしないから安心して」


「それって、俺も倫子さんには干渉するなってこと?」

そう言われてすぐに顔を上げた


だっていつかは気まぐれに気付いて終わると思うから、そう思えば古坂さんの事だって気にしないですむ


「………………」



ちょっとした沈黙が走った


「……今日、やっぱ帰る」


「え?」

どうして?
と聞きたいところだったが、今はその問いかけをグッとのどに押し込んだ


「あっ、じゃあたこ焼き持って帰る?」

七瀬くんにまだ開けてないたこ焼きの箱を渡そうと持って立ち上かったが、

「いや…倫子さんに買ってきた物だから全部食べて」


えっ、この3パックを……?

そのまま顔をこちらには向けないまま身体を翻した


「じゃあ」

「あ、ちょっと」

サッサと玄関に向かう七瀬くんに違和感を感じてつい、腕を掴んで引き止めてしまった


「………なに?」

振り向いた彼は、やっぱり不機嫌だ


「あ………いや」

「なに?」

いつもとは違う態度に一瞬引いた


無表情なその顔に、不安になった

「俺が帰りたくなったの、どうしてなのか倫子さんには分からない?」

「え?」

ジッと見つめられてたじろいだ私に肩を下げた七瀬くん


「いや、少し頭を冷やしますから」

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