七瀬クンとの恋愛事情
頭を冷やす………?
「……そう」
玄関で靴を履くその背中の大きさを見つめた
本当に帰っちゃうんだ………
ドアノブに手を掛けているその背中が一旦止まった
「朝、ふぇるとにいくんですか?」
「え………?あっ、ふぇると?」
着信表示が見えた課長の携帯メッセージのことだ
ふるふると顔を振ったが、背中を向けている七瀬くんには分からない
「行かないよ、朝一で仕上げなきやいけない資料があるから、会社には早く行くけど」
さっきの高科課長のメッセージにも、そう返信しておいた
「そう、じゃっ……」
「あっ、おやす………み、」
パタンッ
こちらの声掛けも早々にドアが閉まった
いつもと同じ玄関の扉の音が、今日は妙に響いて聞こえた
「本当に帰っちゃった………」
玄関から部屋へ戻ると、テーブルの上に残されたたこ焼きのパック
「これ………どうすんのよ、こんなに食べられるわけないじゃない」
ああゆう態度を取られると、自分がどうしたらいいのかわからなくなる
この状況に心を押さえ込もうとすると、急に胸が苦しくなった
あ、どうしよう
なんかダメだ、これ
一度近づいた距離がだんだんと離れていく感覚を私は知っている……
そんな時に傷つかないための予防線だったはずなのに