七瀬クンとの恋愛事情
この人は、たまにこうして昔と変わらない話し方で、社長と社員とではなく
人の気も知らないで、打ち解けて話し掛けてくる
「大丈夫です。先方との話は噛み合ってなかったので、いいタイミングで課長が入ってくれたおかげで私は嫌な思いなんてしてないですから」
「そう、」
申し訳なさそうにしていたその顔がホッと緩んだ
「でも、その分先方は怒ってますよね、この際私の処分はかまいませんので、内容変更だけは免れませんか?」
「うーん、君のことはともかく出来れば始めの計画通りでいけるよう話を付けてくるよ」
そうだ、折角の七瀬くん初リーダー物件なんだ、こんな事で今までの残業してまで立てた業務工程を無駄にはしたくない
「それに高科課長ならきっと話を出来るだけ上手くまとめてくれると信じています」
こうゆう、状況が悪い時ほど高科課長は営業手腕を最大限発揮する人だ
そう思って私は顔を上げ社長を見直した
「またゆっくり聞いてみたいな、高科くんと付き合い始めた君の心境を」
「え?」
いつか二人だけでこっそり話をしていた時みたいに少し身体を屈ませ顔をずらしながら問いかけてくる
「昔から高科くんと君は、兄と妹って感じだっただろ?だから付き合っているって言うのは偽装なんじゃないかと思ってたんだけど、でもやっぱり少し雰囲気が変わったみたいだね。
どんな心境の変化だったのか聞いていい?」
私の真意を探ろうとするくせに、そんな親しみ込めた言い方されると、逆に胸がざわつく
「これ以上は完全にプライベートな事なので、ノーコメントです」