七瀬クンとの恋愛事情
「………社長、なんか雰囲気違いますね」
普段社内で見かける遠巻きな宗馬社長が、倫子さんと話しているのも初めて見る
社長の雰囲気というより二人の距離感だ
「仕方ないだろ、実際何年か前に恋人やってた二人だからな」
「へぇ……」
みんながただ面白がって言ってるだけの噂だと思っていたけど、今の状態を見ていると満更全てが嘘と言うわけではないらしい
「お前って、そうゆう事倫ちゃんに聞いてないんだな」
俺の方を見ながら課長の顔が眉をひそめた
「そうゆう事って? 誰でも彼女の元カレについて知ってる訳じゃないですよね、もちろん噂なんか信じてませんけど」
直接何も聞いてはないが、付き合っていたって昔の事だし、別に気にしていない
「彼女ねぇ…」
どうせこの人は俺と倫子さんとの関係に気付いてるんだろう
「ああ、でもつい最近まで付き合っていたあの外資系変態野郎の事は直接聞きましたけど…」
「変態野郎って、どうゆう事だ?」
おっと、ほぼ倫子さんのストーカーでも知らない事はあるもんだな
「課長に俺の彼女の尊厳については話すつもりないです」
きっぱりと線引きをしてやった
「…………」
社長と向き合って話している倫子さんの様子は気になるが、
それよりも朝から訳の分からない噂に湧き立っている部内の方に正直俺は腹を立てている