七瀬クンとの恋愛事情
「で? どこに名取さんがこもってるって?」
「こもってましたよ、さっき一瞬だけ」
私がいない間にデーターの上書きよるミスを、派遣の後輩にあたる安藤さんに指摘された事でプライドが傷ついた名取さんが倉庫の中にこもって出てこないんじゃなかったっけ?
暗くて電気さえついていない倉庫に、人の気配すらしない
「仲裁に入った俺が、解決させましたけどね」
「………だったら、こんなとこに来る必要ないじゃないっ」
一度はこの狭い棚だらけの倉庫の中、奥まで入ったものの、出入り口へ身体を翻す
が、
「………な、なに?」
七瀬くんに目の前で立ちはだかれると、出入り口へはたどり着かない
思わず身構えて少し後ろへ引いた
まさかまだ昨日のことで怒っているのか?
「話がしたくてその………昨日はごめん、倫子さん」
「ん?」
目の前で小さく頭を下げられた
「俺、一方的にちゃんと話聴こうとしなかったから、倫子さんが悪い訳じゃないのに………」
「………」
昨日、話の途中から不機嫌になった七瀬くんの態度
あれは確かに心が折れそうだった
でも、私も上手く説明出来なかったし、だから今日は出来るだけ普通に接したかったが、朝会った早々気まずい顔で避けられたっけ
「確かに、たこ焼き3パックはキツかったよ」
腰に手をあて、七瀬くんの目の前に3本の指をたてた
「………もしかして食べたんスか?全部?
3パックとも?」
「食べたよ、だってせっかく七瀬くんが買ってきてくれたんだもん。でももぅ暫くたこ焼きはいいわよね」