七瀬クンとの恋愛事情
古坂さんの言葉が頭から離れず、ずっと仕事に集中できなかった
仕事といっても
結局プロジェクトからもはずされ、まだ納期には余裕のある物件を見切り発車をかけるだけの作業を簡単にこなすものしかないけど
「………はぁっ」
溜め息をつきながら自宅の玄関の鍵を開ける
『取り敢えず七瀬と別れて下さい、早急に』
まさか古坂さんに、あんなにハッキリ言われるとは思わなかった
はじめからこんな関係、長く続くなんて思ってなかったし
こうなったキッカケだって流されたようで簡単だったし
だって、あの七瀬くんだよ?
6歳も年下で直属の部下だし、私なんかより可愛い子が選び放題なのに
身長差だってハンパなくて、並んでなんか歩けない相手だ
「………セクハラ」
でももしあの写真が社内メールに送信されたりしたら
本当に古坂さんの言った様な事態になったら
「…………」
チラリと置き時計で今の時間を確認して、鳴らない携帯に視線を落とす
週末の約束をしたけど、会ってもいいんだろうか
かかってくる予定もない携帯の前で暫く画面を眺めて溜め息をついた
仕方ないとお風呂に入っているいつの間にメッセージが入っていた
「あれ?」
それは高科課長からだ
遠慮がちに【今電話していい?】とあるメッセージに返信を送るよりこちらから電話をした
「お疲れ様です。まだ会社ですか?」
携帯片手に聞き覚えのある退社のカードをかざす音が聞こえる
会社にはまだ他の部署の人が何人か残っているようだったという高科課長
そうは言ってももう9時過ぎている
きっと水嶋関係の脇谷くんたちだろう