七瀬クンとの恋愛事情
「そっか」
近くにあった身体の距離がフッと引いた感じがした
「うん、悪いけど…」
ホッとして取って付けた様な笑顔を見せた
信じてくれただろうか………?
たぶん、来週からは彼は忙しくなるはずだから、その間に距離をとっていけば
そうすればなにもかも元にもどるんだろう
遊び相手が遊ばなくなればまた次を探すだろうし、もしかしたら元サヤってことにだって……
「…………」
一度離れた気配から一変、肩に背中から重みを感じて振り返ると、私に凭れながら耳元に熱い息がかかる
「寂しくないの?」
のどから息を出すように低音な小声が私の耳を擽る
「え?」
「あっ、いたいた〜七瀬ぇ」
思わず身体を引いて離れ、振り返ったと同時に
七瀬くんの向こう側から彼の同僚二人が声を掛けて来たから
つい、
咄嗟に死角に入るよう身を屈めた
「何?」
その体勢のまま、二人は七瀬くんに近づいて来た
「今日、飲みに行こうって話しててお前を探してたんだ。何か予定あるか?」
同僚の一人が七瀬くんに詰め寄ってきた
「今日?」
「ああ、もしかして彼女とデートか?」
私の背を向けた隣でしている話に、ますます身体が縮こまる
「あーーいや、だったけどドタキャンされた」
「………っ」
ドタキャンした本人の横で、堂々と頭を掻きながらそう言う七瀬くん
「じゃあいいよな。今日7時に駅前のいつもの所で………」
時間や場所に続いて、メンバーについて話し出す同僚に、どうも私の姿は七瀬くんの死角に入っているのか、存在に気づいてないみたいだ
ここは腰を低くしながら立ち去った方がよさそうだ