七瀬クンとの恋愛事情



「じじばばは無しなんだろ?」


私に対しての二人のやり取りに、今まで黙っていた七瀬くんがそう言いながら、
後ろ手に握っている手に痛いくらいの力が込められた

一方いきなりそんな言い方をした七瀬に二人は少し引いている

「いや七瀬、そんな言い方ないだろ、松原主任だって……」


「あ、あのー、誘ってもらって悪いけど私は予定あるからっ……ありがとう」


そんな空気の中で彼らのやり取りを遮るようにとりあえず飲み会は断った


「はい、俺は参加するから」

座ったまま軽く右手を上げて言った七瀬くんに同期くんたちの注意はすぐに私から逸れた

「あ、ああ」


ほかのメンバーに声をかけるからと、その場から行ってしまった彼らの後で、ゆっくりと握られていた手が離れていった


七瀬くん、飲み会に行くんだ


「じゃあ、倫子さんまた月曜日………」


七瀬くんが長椅子から立ち上がると、座った私には遥か彼方になる彼の顔


「あ………ぅん」

断ってしまった約束の代わりに飲み会が入ってくれて、なんとなくホッとしながら七瀬くんを見送った

嘘の予定だから本当は丸二日間全く暇だ

ちゃんと約束していた手前、ドタキャンはやっぱり心苦しい



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