七瀬クンとの恋愛事情

そう言いってみると今度はゆっくり俺に顔を向けた

「…………ああ、それも知ってる」


「へ?」

予想外の答えに一瞬目を開かせた俺の前で、椅子に背を凭れかけながら目を細めた

「俺が見かけたって聞いてないか?お前と松原が手ぇ繋いで仲良く歩いてるとこ」

「あ……いやそれは」

確かにその話が俺の彼女説を現実付けたが、
てっきり噂にのせて勝手に言ってるだけだと思ってた

大体、倫子さんと手を繋いで歩いてたのなんて確かあの初め一度だけだ

しかも倫子さんのマンションの手前ほんの少しの間だった

もしかして、この人も………

「なんだ?その
人をストーカー扱いするような目は………」

素直な俺の目は疑いに満ちていたらしい

「偶然だ、松原のマンションの近くにうちの奥さんの実家があるんでね、
そこへ出向いた時偶然見かけたんだ」

なるほど、でも………

「知っててなんで全部バラさなかったんですか?」

この人が軽口で言いふらす人ではないのは分かってるが、その場面の俺の状況だけをバラすとかっておかしくないか?

「全部バラされたかったのか?女上司が6歳年下のイケメン後輩に手を出したなんて言われかねないのに」

「…………っ」


思わず考え込み、身体を引いた俺に脇谷主任は溜め息をつきながら肩を落とした

「それでも今バラしたら、松原が二股かけてるって事になるだろうな………」

「………それは」

「でもってお前の方ならまだしも、高科課長を弄んだとなれば、仕事がしにくくなるし。違うか?」
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