七瀬クンとの恋愛事情
PM 11 : 00



「すみません、終電はあったんですけど…」

突然のチャイムだったが、
こんな時間の訪問者ならたぶん予想がついていた

「七瀬くん、今まで残業だったの?」

「うん」

玄関で前屈みになり、靴を脱いだ顔は少し疲れているように見えた
ここで帰すほど非情な人間にはなれない

「ご飯は?」

「残業中にコンビニで買って食べました」

ノートパソコンに書類やファイルが入っているのか、いつもより膨らんだビジネスバッグを床に置いた

「仕事持って帰ってきたの?」

「会社のソファーで寝たくなくて、シャワーも浴びたいし」

脱いだ上着をハンガーにかけ、部屋のローテーブルの前に腰を下ろした七瀬くんにコーヒーでも入れようとキッチンへ向かおうとしたら、グィッとその手を引かれた

「倫子さん、ちょっと座って」

「ん?」

「お願いしたい事がある」



「………え?」

カーペットの床をポンポンと座るように促され、それに従うと、部屋着の膝にゴロンと頭を乗せてきた


「な、七瀬くん?!」

足を投げ出したまま私の膝の上で軽く伸びをすると、両手を腰に回し顔を埋めてきた

「少しだけこうしてたい………」

この膝枕状態に、まるで甘えた声をだした


ジッとしたまま動かない七瀬くんの、普段触れないウェーブのかかった柔らかそうな髪にそっとふれてみた

………なんか、もふもふして気持ちいい

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