七瀬クンとの恋愛事情

「〜〜〜〜〜っ」

急いでバッグを拾い上げてそれを胸に抱えながら、静まらない心臓を抑えた

前にいた二人と私はエレベーターから降りるが、七瀬くんはそのまま中に留まっていたから
唇を抑えたままもう一度振り返ると、その私に対しペロリと舌先を出した


目の前に他の人がいるっていうのにっ
なんて事を！！

なんて事………


そう思いながらも、触れた唇の感覚が蘇る



「あ、七瀬ぇ〜」

顔を伏せたままエレベーターを後にした瞬間

七瀬くんが乗ったエレベーターに、一人乗り込んでいく古坂さんとすれ違った

………あ、

「よぉっ」

そう声をかけた七瀬くんに、頰を染め嬉しそうに近づいていく

私はそれをさり気なく目で追っていて、一瞬横目で古坂さんと目が合った

「…………っ」

七瀬くんに駆け寄る古坂さんを背に扉が閉まっていく

それと同時に
一緒にいた時の安心感から、気持ちが一気に落ちていく


エレベーター内で今まさに古坂さんと二人っきりのまま、上の階へと続く階数の点滅を扉の前で暫く見送っていた