七瀬クンとの恋愛事情
課長と二人っきりの部屋で迫られて「付け入る隙はまだあるんだな」
「本当に申し訳ないですっ」
私と高科課長を前に深々と頭を下げる加納さん
「そんな、謝らないで下さい。仕方ないですよ」
今日、金曜日の加納さんとの打ち合わせの途中、彼女のプライベート携帯にかかってきた着信で、その場を中座した加納さん
どうも保育園に通っている5歳のお子さんに熱があるらしく、普段は近所に住んでいるご実家で見てもらっているらしいのだけど
「こいゆう時は、うちの子たちどうしても私じゃないとダメで………」
大手花菱商事のキャリアウーマンがすっかりお母さんだ
ただ今日はこの打ち合わせの後、私と加納さんとの飲み会をセッティングしてしていたのだ
とりあえず打ち合わせだけはしっかり終わらせた
「私から誘っておいて、この埋め合わせは必ず近いうちにさせてくださいね、松原さん」
何度も申し訳なさそうに頭を下げる
「じゃぁ、今日はキャンセルってことで、僕の方から店に電話しておきますね」
お店の予約を入れてくれたのも高科課長だった
「あ、でもちょっとまって………」
携帯でキャンセルの電話をかけようとしている課長を加納さんが止めた
「なにもキャンセルすることないじゃない?」
「えっ?」
「私が言うのもなんだけど、今からキャンセルだとお店に迷惑がかかるし、どうせなら高科さんと二人で行けばいいじゃないですか?」