七瀬クンとの恋愛事情
今はそれに答えるだけの容量が私にはないんだ
加納さんからの課長の話に、とりあえず笑顔を見せて誤魔化した
「………人生の選択にはいろんな責任が付きものだから、沢山考えて松原さん」
私の両肩をがっつり掴んでそう言った加納さん
「は、はいっ」
思わずその熱い瞳にのまれそうになるくらいに
彼女の今まであったいろいろな人生の選択肢について、私も聞いてみたかった気がする
話したい事はいっぱいあったのに、と残念そうに言いながら、熱を出した5歳のお子さんの元へ急いで帰っていった
「じゃ………行こうか。ごめん、遅くなって」
「いえ」
天気予報通り夕方から雨が降りだし、その雨足は止むどころかこれから雨が強くなるらしい
したがって花菱商事からタクシーで移動した
うちの会社近くにあるその店は、一見居酒屋ではあるが、内装は落ち着いたモダン和装といったお店だ
あらかじめ完全な個室を予約してあったみたいで、そこは周りからの騒音もなく
そんな雰囲気の中で改めて高科課長と向かい合って座ると、何を話していいのかと少し困ってしまう