七瀬クンとの恋愛事情

「そうゆうんじゃないんですよ私達は」


前に課長が言った通り将来とか考えなくてもいい
ただの馴れ合いに過ぎない
強く拒否することも、かと言って受け入れることもできない

「私たち……か、俺も大概離れていたが恋愛ってもっと楽しいもんじゃなかったか?」

向かいあったテーブルで少し身体を乗り出した課長が眉をひそめる



「そうですね、このままはダメですね……ハハッ」


「倫ちゃん」

ボソっと思い詰めながら呟くと、目の前の課長が目を伏せて溜め息をついた


「この際、全てをリセットしないか?」


「えっ?」

改めてはっきりと私を見据えてきた


「………前から俺、実は花菱商事から来ないかって言われてるんだ」

来ないかって事ってそれは………


「引き抜き、ですか?」

初耳で驚いたけど、そうゆう話があってもおかしくないとも思う

「会社の重要取り引き先だから、もし移ったとしても出来るだけ今より有利にこっちへ仕事が廻せるようにするつもりだし、悪い話じゃないと思うが………」


悪いどころか凄い事じゃないか


「倫ちゃんも俺と一緒に来ないか?花菱に」


「…………えっ?」


「今日加納さんが倫ちゃんを誘った本当の本題はたぶんこの話だったと思うんだ」


決して課長が贔屓目で誘う訳ではなく、あくまでも加納さんからの申し出だと言われた

そうだとしても

「リセットって………?」

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