七瀬クンとの恋愛事情


「本心で俺としては倫ちゃんをこのまま残して行きたくはないし、一緒にやっていきたいのは仕事だけじゃないと思ってるから」


「………」


いつもと違って冗談ではない課長の真剣な眼差しに、一瞬胸がドキッとした




結局飲み放題で予約をいれていたのに、課長はお酒を飲まず、私も一杯の梅酒を飲んだだけでコース料理を堪能した


そしてやっぱり支払いはすでに済んでいて


「すみませんっ!本当にいつもいつもご馳走さまですっ」

申し訳なく頭を深々と下げた

外の雨は、時間がたってもおさまってはいなかったが、電車に影響のあるほどではなかった


「今日はありがとうございました」


「こんな雨の中、本当に車で送るのに」


「いえ、電車がありますから」

時間はまだ9時前だし、いくら雨がひどいからってこれ以上課長に甘えては絶対にいけない

傘をなるべく短く持って雨を避け、とりあえず課長と店から駅までの距離を歩きだした


傘に打ち付ける雨の音で、会話もしないまま並んで歩いていると、
かすかに私を呼ぶ声がして足を止め、後ろを振り向いた

「………えっ?」


「倫ちゃんっ!!」


何もかもがまるでスローモーションの様だった



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