七瀬クンとの恋愛事情
バシャンッ!!
いきなり肩を押されてバランスを崩し、そのまま雨水の溜まるアスファルトに倒れ込んだ
駅へ人が行き交う暗い道端で、傘が飛び強い雨が容赦なく打ち付ける
何が起こったか分からないまま、あっと言う間に身体に雨が染み込んでくる
顔を上げれば私を押した本人が目の前で仁王立ちしていた
その時は打ち付ける雨で彼女の顔が見えなかったが、
「大丈夫かっ倫ちゃん!
なにやってるんだカナちゃんっ!!」
高科課長が傘を差し伸べてくれた所で、初めてそこにいるのが【ふぇると】のカナちゃんだとわかった
「松原さんでしょう? 七瀬さんに私の事をマスターに言うように告げ口した人って…」
「告げ口?」
課長に引っ張ってもらって立ち上がると、彼女が怒りを込めた声で詰め寄ってきた
「私は、現実じゃなくてもただネットの中で七瀬さんと恋人になって、みんながコメントをくれれば、それだけでいいだけだったのにっ!
彼にだって、そんなに迷惑かけるつもりもなかったのよ!」
「…………っ」
迷惑って、誰もが閲覧できるネットの中で無いことを書かれるのは良くない事だと思うが
「それなのに………」
なぜか頭に血が上っているだろう彼女の手は、ふるふると震えている
「それなのになんで私が仕事まで取られなくちゃいけないのっ!!」
「え……?」