七瀬クンとの恋愛事情
固まったまま心臓だけが早打ちしていて、上手く言葉が出てこない

そのまま更に近くなる



「か…課長は、そんな事しないと思います」

そう言うと一瞬ピタリと止まった

咄嗟に出たその一言に、課長は目を細めて

「俺にそんな度胸はないって事か?」

「ちっ、違いますっ!そう言う事では無くて、あの………」

身体を引いたまま付き合わされた顔に正面から目を合わせ

「私は、課長が後輩思いなの知ってるから」

言葉足らずだけど、
言いたい事は通じたかな?
見つめられながら課長の大きな手が私の髪を搔き上げる

「………っ」

次の瞬間再び近づいた課長に、目をつむり下唇を噛み締めた

チュッ

頭の額に感じた柔らかな唇の感覚

「………え?」

閉じていた目を見開くと、なんとも言えない表情の課長が、
小さく溜め息をついた

固まったままの私から離れて、反対側のソファーの隅へ座り直した

「………あのな、
この歳になれば男だって恋愛には臆病になるんだ。それを後輩思いとか言われても……」


距離をとったままソファーに凭れて組んだ脚を投げ出し、額を手で覆っている課長が
呟くようにそう言った

「言っとくが、今は上司じやなくて男として言ってんだから」


「すみません、ごめんなさい…」

その場で膝を抱え、顔だけ課長に向けた

「謝るなっ、逆に傷付くわ」

複雑な顔してまた大きな溜め息をつかれた



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