七瀬クンとの恋愛事情
「もうこうゆうの、やめよう」言ってしまった後悔
「ありがとうごさいました」
雨はだいぶ小雨になっていたが、結局高科課長に家まで車で送ってもらってしまった
「倫ちゃん…」
車のドアに手をかけると、運転席から声をかけられた
「この際、俺を逃げ場にしてもいいんだからな」
これがこの人の優しさなんだろう
「ありがとうごさいます……でも、ちゃんと考えるって言ったんですよ私」
車から出ると、その場で課長へ深々とお辞儀をした
「お疲れ様でした高科課長」
私のマンションの階段から車の止めてある道路をはさむ道から背の高い影がゆっくりとそう声をかけて近づいてきた
「…………七瀬くん?」
「お帰りなさい倫子さん」
ニッコリと笑顔で近づいた七瀬くんが、両手で覆い被さるように車から私の身体を引き離し、
車の助手席から覗き込んで、運転席の課長に目を細めた
「職権乱用じゃないですよねぇ、高科課長」
「七瀬くんっ!?」
私を自分の背中に追いやって、そんな口を叩く七瀬くんの上着を引っ張った
「お前も余裕がないんだな、七瀬」
「………行こう、倫子さん」
身体を翻し、感じの悪い態度で私の手を引いた七瀬くん
「ちょっと、待って!!」
力の強さには全く敵わないため、引き摺られるように連れて行かれて、
顔だけ高科課長へ向けると、呆れた表情で私に手を振っていた
階段を上がる途中で、課長の車が去っていく音がした
仮にも高科課長は七瀬くんにとったら格上の上司だろう