七瀬クンとの恋愛事情

なのに何て態度だ


それに、全く自分脚のペースで階段を登っていくから、そのスピードについていくのも大変だ


「七瀬くんっ、そうゆう態度良くないって」


私の部屋の玄関の前で止まった


「…………」

顔を見上げても目を合わせようとはしてくれない


「いつから待ってたの? 残業だった?」

「倫子さんは課長とずっと一緒だったの?」

そう聞かれ一瞬ピクッと肩があがり、鞄から取り出そうとした鍵がうっかり手からすり抜け落ちてしまった


カシャンっと床に落ちた鍵の束を、七瀬くんが拾ってくれた

鍵をもらい受けながら


「………うん」


「花菱商事の女性担当さんとも?」


「……………」


玄関のドアを開けながら小さく息を吸った



「それは中止になった、向こうの都合で」

先に入った私に続いて七瀬くんを招き入れるように彼を見上げた



「じゃあ今まで二人っきりだった訳だ」

うっ……
そう言われて、つい視線を逸らせた


「変な言い方しないで……別に、食事しながら仕事の話してただけよ」


バタンッ

と、玄関が閉まると背中からふわりと彼の腕に覆われ、
その顔が近くまで降りてきた

「ああ、やっぱり倫子さんも花菱に一緒にいくの?」


「えっ?」


顔に伸びてきた指が私の髪の毛を摘むと、屈んでスンッと口元を近づけた七瀬くん

そのまま上目遣いに私を見つめる


「いつもと違う匂いさせて帰ってくるなんて、ひどくない?」

「………ちがっ」

その手を振り解いて見上げると、逆に彼の両腕にホールドされ顔を胸の中に押さえ込まれて身動きがとれない

いたい……っ


「倫子さん…本当はどこ行ってたの?」

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