七瀬クンとの恋愛事情

締め付けるくらいの腕の中で、七瀬くんの低い声が耳元で響く


「……っ!」

後ろ髪をグイッと引っ張られ上を向かされると、そのまま唇を強く塞がれた


「ん……っ、んん!」

息が出来ないほどの、自分本位で強引なキスが顔を逸らす事も許してくれない

力を込めて押し出したりなんとか抵抗を試みてもその力が強くて、背中に回った手でただ彼の服を引っ張ることしか出来ない

「痛いから」


そう言うとそのままベッドに放り込まれ、その上から軋む音と一緒に七瀬くんが覆いかぶさってきた


「ねぇ倫子さん」

絡まった脚に押さえ込まれた身体は完全に私の意思を逸脱している行為だ


部屋の明かりもつけてない暗くて見えないはずの七瀬くんの顔が、窓からカーテンに反射している外からの街灯の灯りで影をつける


その一瞬見せた歪んだ表情になぜか胸が痛んだ

「聞いて七瀬くん」


「やだよ」


抑え込まれたまま、首筋に落ちる彼の愛撫に顔を背ける


「やめてっそうゆう気分じゃない」





急にピタリッと止まった彼の動きが、ゆっくりと顔をあげる


「じゃあ、どうゆう気分なの?」


「…え?」

伸びてきた手が、ベッドに組しかれている私の頭をくしゃくしゃと触る


「まだ、髪が湿ってる……」


私の髪の毛……?
そういえばドライヤーをかけずそのままだった


「………これはっ」

「高科課長の車で送られてきて、あの人は普段着に着替えてた……」

私の髪を触りながら、鋭く突き刺さるような眼つきで見下ろされた

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