七瀬クンとの恋愛事情
「いったい今までふたりで何してたの?」
確かに課長の部屋に行って、シャワーも浴びて服が乾くまでそこにいた
でも、その事情を話しても今彼が信じてくれる気がしない
「何言って、何もしてない。転んで雨に濡れたから課長の部屋でシャワーを借りて服を乾かしてもらっただけで…」
私を見下ろす七瀬くんの指はいつの間にブラウスのボタンを両手で開けていく
「じゃあチェックする」
「なっ!やめ」
はだけていく服から逆らうように身体を捩らせ
七瀬くんの手を振り解く
「自分だっていい加減なくせにっ!」
この状況で咄嗟に自分の逃げ道を探した
「………自分、って俺が何?」
「…………」
口を噤んで下唇を噛んだまま顔を背けた
七瀬くんだって
振ったなんて言っても、古坂さんが諦める距離感すらとろうとしないじゃない
………それに彼女が言っていた
七瀬くんは真面目に社内恋愛なんかするつもりないって、私とだって遊びなんだって
「……………」
って、喉の奥から出て来る言葉を押し込めて
ムッと口を閉じた
「………ああ、そっか」
組み敷いて私を見下げながら声のトーンを上げた七瀬くん
「古坂のこと」
えっ?
「ここで言うんだ……あれ、見てたんですよね。
俺が、古坂とキスしてたことだろ?」
急に心臓が
息苦しいくらい騒ぎだした
私が見てた事、七瀬くんは知ってたんだ
「あんなの、ただの気まぐれだろ?」