七瀬クンとの恋愛事情
気まぐれ?
君のことが大好きな同僚の女の子と大通りで大胆にキスしてたのが?
「最低ね……」
「大体、そんなの男と女じゃ違うだろ?倫子さんこそ自分のやってる事棚に上げてるんじゃねーの?」
「ちがうっ、私は…」
「全然、何考えてんのかわかんねぇよ……」
「……わからなくてけっこうょ」
声が震えた
自分でもちゃんと出したのか分からない声
気がついたら、ベッドにある枕代わりのクッションを掴んで
それを彼めがけて振り上げていた
「………っい、」
見事に顔に打ち付けるとそれを
何度も何度も力いっぱい振り下ろした
「な、ちょっとやめっ 倫子さ………っ」
わからない
わからないけど、無性に腹が立って
それを吐き出したくて振り上げ、叩きつけた
こっちだって真剣に考えているのに
「今日は帰って」
「なん………っで?」
喉元から一気に熱いものが飛び出すように
なぜか涙が溢れた
「帰ってよ…」
「倫子さんっ」
クッションを振り回す私の手首を七瀬くんに掴まれると、顔を見られたくなくてそのクッションで隠した
「も………やだぁ」
何が嫌なのか自分でもわからない
ただ、
今この瞬間の彼が、居た堪れないほど複雑な表情で私を見降ろしているのがわかる
「わかったよ、もう帰る…」
そう言って、触れていた手を放して静かに私から離れていった