七瀬クンとの恋愛事情
『倫子さん』
何度もそう呼ばれて、後ろから大きくて温かい腕の中に包まれて
小さなベッドの中にあった幸せが、ほんのさっきまであったのに
静まり返った部屋に朝の日差しが差し込んでくる
熱で身体が重く頭がボーっとして、その場に座り込んで動けないまま、いつの間に時間が過ぎていたみたいだ
気がつくとベッドの上にある携帯の着信が鳴っていた
『倫ちゃん、起きてた?大丈夫か?』
スマホから聞こえてきたのは高科課長の声だった
「…………か、ちょう?」
今何時だろう
夕方? 私、どれだけこのままでいたんだろ……
ベッドを背もたれにしてそのまま眠り込んでたせいでぶり返したのか、重たい頭が上がらなくて力も入らない
頭痛によってさらにあがった熱で身体全体に倦怠感が
『ちゃんと御飯食べたか?薬もちゃんと飲まなきゃだめだぞ』
耳に入ってくるいつもの課長の声に
ちゃんとしなきゃいけないのに、身体に力が入らない
「……………ん」
のどにある何か熱い塊が息を堰き止めて上手く空気が吸えない
どれだけ時間が経ったのかもわからない
何も食べてないし薬も飲めてなかった
昨日、こんな状態のわたしと居た七瀬くんにうつしてないだろうか
朝早くうちを出て行ったみたいだけど、始発にはちゃんと乗れたんだろうか……
『倫ちゃん?本当に大丈夫か?』