七瀬クンとの恋愛事情
「大丈夫、洗い方にもこだわりがあるから、そっちでテレビでも見ててな」って
「…あの、課長?」
「待ってて今コーヒー入れるから」
「………すみません」
結局お邪魔して椅子に腰を下ろしてから一度も場所を動かないまま上げ膳据え膳
まるで「待て」を言い渡された犬みたいに身動きが取れない
「豆にもこだわってるんだけど、何かリクエストとかある?」なんて
いかにも産地別のいくつかの豆から選んでブレンドして、さらにレトロなコーヒーミルで豆を挽いた後、こだわりのドリップしたコーヒーから香しい匂いが………
味の感想を聞かれたらどうしようなんて、逆に落ち着かないし、会社にいる方が楽な気がする………
どうして気がつかなかったんだろう
付き合ってみて初めて知った課長のなんにでもこだわる性格
「どうしてですか?!全然問題ないじゃないですかぁ」
言い訳じみた私の理由に、目の前で名取さんが盛大な溜め息をついた
「今どき家事する事に理解できる人なんていませんよおっ!それに加えて仕事が出来て、お金持ってるのにケチじゃないし
尽くしてくれる人の何が不満なんですか?!」
こらこら、もうちょっと言い方あるだろう
「顔だって悪くないと思うし」
「…………名取さんって、七瀬くん派じゃなかったっけ?」
「松原主任こそ、元カレ社長でしょ?高科課長だってある意味今や同じハイスペックじゃないですかぁ」
「…………」