七瀬クンとの恋愛事情
「ここで松原にその話題を出してくるところがさすが名取だよな…」
何処かからグラスを持って移動して来た脇谷くんが名取さんと挟むように私の隣に座った
「だって…脇谷主任もそう思いません?」
確かに全くオブラートに包まないもの言いだ
ここまでハッキリと聞いてくる子なんて、そういえばいなかったなぁ
「ハイスペックねぇ、松原ってそうゆうのにこだわりあったっけ?」
「ないわよ、別に」
自分のグラスビールを一気に飲み干し、ついでに次のビールを追加した
「……それに、社長とはちょっと違う」
「ん?」
なんとなく思いだした6年前の社長とのこと
呟いた私に名取さんと脇谷くんが顔を揃える
「何が違うんです?仕事はCEOだし、身なりはもちろん容姿まで決まってて、典型的なハイスペックじゃないですかぁ?」
「………あの人、仕事以外は何も出来ない人だったから」
「え?」
そうだ、思いだした
宗馬治郎 当時は37歳でタワーマンション住まいの一人暮らしだったが、
家事掃除は一切ヘルパーさん任せ
脱いだら脱ぎっぱなし、食べたら食べっぱなし、出したものは片付けない
自分の身の回りのことには無頓着な人だった
「だから部屋に行って身の回りの世話する事もあったなぁ……」
「………主任って本当に社長と付き合ってたんですね」