七瀬クンとの恋愛事情

確かに
むかし、お嬢様で美人な綾子を妬んでいた当時のお局さんからの嫌味を、意外にも彼女はさらりとかわしていたっけ

「入社して俺は速攻でフラれたがな」


「「………はっ?」」

いきなりの脇谷くんの爆弾発言に私も名取さんも目を丸くした

「遠い昔の話だ」

私たちを目の前にしていつもより少しだけお酒に飲まれている脇谷くんがカッカッと笑いながら言った

「知らなかった、そうだったんたぁ……」

あの頃の強面ての脇谷くんを振るなんて恐るべし綾子
でもそれだから保たれてた私たちの関係

「松原だってその頃は社長のこと隠してただろ?」

「あっ、でも高科課長だって松原主任への気持ち最近まで隠してたって言うから、みんなお互い様だったんですねぇ〜」

「課長のは結構バレバレだったがな、気づかなかったのは松原だけだろ」

なんか思わずはははっと苦笑いで
「結局この歳までこじらせてるよね私」と誤魔化すと

「真面目すぎるからだろ松原は、社長の時にしろ高科課長のことにしても、
もっと気軽に付き合えればよかったのにな」

「………………」

その言葉、今の私には手痛い指摘だ





「あれ? じゃあ七瀬さんとはなんで別れちゃったんですか?」


「………は…ぇ?!」

名取さんの言葉で一瞬固まった
すぐに脇谷くんの方に視線を向けてみると、「あー、」と大して変わらない様子

「あ、え? それなんで………ってか知ってたの?」

そう言ってしまって慌てて口を押さえたが、目の前で二人してコクコクと頭を下げた

名取さんだけでなく脇谷くんまで………?

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