七瀬クンとの恋愛事情
「はぁっ………」
そうか、まぁ確かに高科課長だっていつの間にか気づいていたし、まさか脇谷くんの奥さんの実家がうちのマンションの近くだったなんて思いもよらなかった
『あっそういえば俺、七瀬と彼女見かけたよ。
この前仲良く手繋いでるとこ』
なんてあの話は、
喧嘩した奥さんを実家へ迎えに行く途中に、私たちを本当に目撃したものだったんだ
知ってて黙ってるなんて脇谷くんらしいけど
まさか名取さんにまでバレてたなんて………
あのお見舞いに来てくれた日、うちのハンガーに掛けてあった七瀬くんのスーツ
次の日に彼が会社に着て来たのを見て確信したらしい
しかし名取さんの場合は知ってて黙っていたなんて、珍しいこともあるもんだ
「私だって人の立場ってものを考えますよ。
大体、あの後から風向きが変わったじゃないですかぁ」
「………う」
すごい、この子って本当結構よく観てる
「私が理解出来ないのは今の状態ですよぉ、
なんなんですか?あれは…」
そう言ってあらか様に指差した方は、人の送別会にもかかわらず明後日の方向で盛り上がる若者集団たちの中
「なんであの二人がくっついてるんですか?!」
「………………」
その輪の中で仲睦まじい七瀬くんと古坂さん
彼女の頭は常に彼の肩に寄りかかり、どう見ても同僚として飲んでいる距離じゃない
テーブルの下で絡まり繋がれた手
眉を歪ませ不満を露わにする名取さん
私だって目を背けたくなる